書帯草が風にゆれる









 

 

  アシスタントが綴る 8月  

 

地中海原産の植物 ミルテの花が、我が家ではじめて咲きました。
古代ローマ時代には神々に捧げられた花であり、現在も 結婚式などの祝い事に用いられているという 純白のとても美しい花です。
加藤さんの盆栽を見て以来、育ててみたいと強く思っていた植物のひとつでした。 触れるとよい香りを放つ 厚みのある葉や、ちょっと無骨な感じのする枝ぶり、そして「地中海」という響きに 単純にときめいてしまいました。

出会うことができたのは8年程前。震災前の仙台です。
友人のパートナー S君が勤める園芸店で 小さな苗木のミルテを見つけたときは、うれしくて大騒ぎをしてしまいました。もの静かな S君はびっくりしていましたが、ボソッと「そんなに喜んでもらえると、僕もうれしい」とはにかんだ笑顔を見せてくれたことを覚えています。

後に 私が入手したのは改良種であったと分かりましたが、よい香りはそのままに 私のワイルドな生育環境にもへこたれず、元気に育ってくれていることは、なによりのことと思います。全く花が咲かず、鉢中では難しいのでは とあきらめていたところ、今年の春に小さな花芽をつけました。

雨の降りしきる最中、花弁からあふれるような 繊細なおしべをまとって、誇らしげに咲き出したミルテ。初めてつけた数少ないつぼみを 惜しげもなく開いてゆき、 あっという間に散っていきました。
なんだか淡々とやるべきことをこなす 職人のような姿勢。こんなことを感じられる時、植物を育てる機会を得られて 幸せだなと思ってしまいます。



 2015年7月20日  山田 ナオコ