止まっている


 

 

  アシスタントが綴る 8月  

 

まもなく さいたま市での展覧会を迎えます。
那須では体験したことのない 連日の猛暑のニュースに、戦々恐々となっています。
小沼さんは かなりの暑がり。加藤さんは 極度の冷え性。
体温を軽く超える外気と 強烈な冷房が予想され、体調が心配です。
よい個展になることを祈っていますが、何より無事のお戻りを 強く願わずには
いられません。

那須でもこのところ、昼近くに30℃を超える日が出てきました。
午前中 風がわずかでもあるうちは 動きやすいのですが、午後は 強烈な日差しと熱の
下で すぐへばってしまうので、日陰を探しながら、庭整理などをしています。
あうりんこ星をとり囲む 大きなコナラが、私たちを助けるように 枝葉を広げ、涼しい
木陰を作ってくれています。林をぬけてくる風が、ほてった体を落ち着かせ、セミや
鳥の声を豊かに届けてくれます。

大きな木の下で、神宮の森のことを思います。
100年前、原野や畑地だった場所に、先人たちが 人の手を介さない「天然更新する
永遠の杜」を目指し、作り上げられた神宮内苑・外苑。その構想は、植栽樹木を
自然林へと遷移させるため、150年先をも見通したものでした。
全国から10万本の献木が寄せられ、のべ11万人のボランティアが集い、植林や
参道作りがなされたそうです。
自然への畏敬の念を持ち、未来を見ていた人々から手渡された、贈り物のような
この森はいま、どれほど集う人に幸せを与えてくれているでしょう。

8月には樹木の伐採がはじまる予定の再開発。移植も行い、最終的には緑が増えるとの
プランらしいですが、どうしてこんなことが言えるのか、理解ができません。
現在の気候で、東京の過酷な環境の中で、植物が生きていくことがどれほど大変な
ことか、想像できないはずがないと思うのですが・・・。

長い年月をかけて、人知の及ばない働きをしながら 大きく育った木々たちが 見せて
くれている美しい景色は、今を生きる私たちだけのものではなく、未来へ向けて
大切に手渡されるべきだと思います。

2023年 7月18日 記す  山田ナオコ

 

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