温室の様子が 明るくなっている。
それぞれの鉢にミドリがさしてきた。
とはいえ、春はまだはじまったばかり。
どれも覚束ない様子をしている。
本格的な春の装いまで しばらく待たねばならない。
けれど こんなミドリの気配に遭遇すると 心は浮き立つ。
一年の展開が 楽しみでならなくなる。
水やりなどをしていると ひと月以上も先なのに
5月の展覧会のことが 頭をよぎる。
まだ早い そんなことを考えるのは・・・。
その前にやるべきことが沢山あるではないの・・・。
そう打ち消しつつも 冬眠から目覚めたばかりの鉢を前に、
「これは展覧会にだせるかナ」 そんなことを考えてしまうのだ。
立ち止まってはいられない 次に行こう。
じょうろを持ちながら 次の棚へ・・・。
その 次の棚上で 豆鉢の苔の中から
伸び出そうとしている紫色のハッカの新芽を見つけた。
小さな新芽の粒が 宝石のように光っている。
胸がキュンとする。「これは どうかしら・・・。」
また 展覧会場を思い浮かべている。
ややこしい気持ちが往来して 水やりがはかどらない。
2010年 3月28日 記す 加藤 文子
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