2010年8月         

  

 

   

  ウスノキ              
      真夏の実も 秋の紅葉も 美しいのです。

 

 

 

 

   

   ノガリヤス・ゴシキタデ             
          ふわっとした姿が良いでしょ。


 

突然の猛暑に 見舞われる。
いくら暑くても 半袖を着ることのなかった私も ついに半袖になる。
朝8時を回ると 温室の温度計は 40℃を指している。
信じたくもない数字が 現実となった。
温室がこれ程までに暑いのには 原因がある。
ガラスと鉄骨が熱を帯びることと、片方の天窓が故障していて
開かないことも由来する。
とはいえ 尋常とは思えない暑さである。
そんな訳で 温室の作業場で仕事しようにも 
思考が止まってうまく行かない。
手入れしようと回し台に運んだ盆栽を 見据えることができず 
座ったまま ボォーッとしている。
ふとした瞬間 壁面に吊るした扇風機が目に入る。
備え付けの扇風機のことを 忘れていたのだ。
こんな時こそ 使わなくては・・・。
スイッチに繋げたひもを引っぱる。 どうかナ・・・。
風を待っても 風が来ない。
冬の間 覆いをかけておくのだが その時に角度を
上に向けてしまったのかも知れない。
風が届くように 下向きにしてみる。
今度は良好。
上方で風が流れるのは いい。 気配が涼しい気分にさせる。
ブーンという扇風機の音も 久しぶりだ。
眠りに誘われそうだけれど 心地良い。
さいたま市から 一緒に引っ越した扇風機。
独立して間もない頃 今日のようなとても暑い日に 
父から贈られたものだ。
当時 間柄はあまりうまく行っていないはずの父であったが、
時々やってきた。
庭を巡って 感想も述べずに 帰って行く。
その日も突然あらわれて、仕事場にいた私に
「こんなに暑いのに 扇風機もないのか。飽きれたもんだ。」
そんな事を言って 出て行った。
数時間後、扇風機を抱えて 戻ってきたのだ。
「熱で頭がオカシクなっちまうゾ」と、言い残して 
置いていったのだった。
25年も前のこと。 
ブーンという音を聞いていたら、あの夏の日のことが思い出された。

                      

         2010年 7月23日 記す   加藤 文子  

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