華奢な枝先でピンクの花が こぼれるように咲いている。
今年は特別見事で、何度もカメラに収めている。
それなのに 植物名を記したラベルを失くしてしまったので
名前がわからない。
ウツギの仲間であると思うのだが、耳慣れない横文字の名前を
覚えることができなかったのだ。
思い出そうにも 何も出てこない。
園芸植物図鑑の中に 載っていなかったか。
パラパラ めくりはじめる。
ウツギだとしたら ユキノシタ科のページを探せば良いものを
意味もなく はじめの方からめくっている。
いろいろ出てきて あっちに立ち寄り こっちに立ち寄り
散歩するような気分になってくる。
花キリン。サボテンのようなトゲトゲと真っ赤な花。
20代の頃 花屋の店先で売られていたのを買い求め
プラスチックの白い鉢では忍びなくて
陶の鉢に植え替えて育てていた。
まだ 人生の苦味も甘味もわからない ちょっと得意な私を思い出す。
プロティア。盆栽の仕事で南アフリカを訪れた兄が
帰国後 お土産話を 沢山してくれた。
その時、プロティアという植物を はじめて知った。
兄は「バイ ダンキー」を連発していた。
意味は アリガトウ だったかナ。
その兄は もういない。
ビヨウヤナギ。宮廷に仕える昔の中国の女性のイメージ。
道のわきに植えられているのより 鉢の中にある
楚々とした姿を見る方が好きだ。
マツリカ。蝶ネクタイのような丸葉が 小さな純白の花を
抱きかかえるようにして 葉を中心に左右対称に並んでいる姿が
面白い。
図鑑にはめずらしい デザイン的な写真だと思った。
このページだけ 妙に浮いている。
図鑑は 見るたびに新しい発見がある。
見落としているものを 再認識する。
あちこち脱線しながら 長いこと図鑑を見ていた。
結局 探していた植物は 見つからなかった。
2012年 5月26日記す 加藤 文子
|