朝から くもりや雨で はっきりしない天気であったが　夕方になって
突然 日がさした。
牧草の向こうに並ぶスギの防風林が　オレンジ色の光の帯を背景に
シルエットのように映し出される。
はるか上方では　黒い雲をかき分けるように 青い空がひろがっている。
葉を落としたコナラや 雑木の幹や枝の流れも　はっきり辿ることができる。しなやかで美しい姿　まるで巨大な葉脈をみているようだ。

一日の大半を室内で過ごした私は　外の空気が吸いたくなって　コートをはおる。外は風が冷たくて　思わずポケットに　両手を滑り込ませた。
そのまま 雨で湿った庭を歩いていたら　デザイナーの友人Gが遊びにきてくれた日のことを思い出した。
今日のような雨上がりの寒い日だった。

Gは ポケットに手を入れて　厳寒の温室で植物をじっと見ていた。
苔むした地面から シダの生える棚下も気に入ったらしい。
デジカメのシャッターをきりながら・・・何か また一緒につくろうか
　って 言ってくれた。

エマ・トンプソン と 彼女の実の母である フィリーダ・ロウ が 母娘役で出演した映画「ウィンターゲスト」と、音楽を担当したマイケル・ケイメンのことも　絶賛していた。
それぞれが 複雑な思いを 胸に抱いて　凍付いた冬の草原を足ばやに歩くシーンが 思い出される。

Gが我家を訪れたのは　その日が最初で最後になった。