2023年9         

元気 元気

床のタイル

玄関のひかり Ⅰ

うら庭がみえる


アシスタントのYさんが 庭仕事の合間に ワイルドオーツの穂や
アヤメの結実したパーツなど ドライオブジェに使えそうな植物を
乾燥させてくれている。
昨日の雷雨で久々涼しい朝を迎えた今日は ドライオブジェ制作には
うってつけだ。
ともすると 温室の仕事場は 日中40℃近くになるので こんなチャンス
逃すのはもったいない。
いつもだと 8月のお盆が過ぎた頃から 秋風がたちはじめるのだが
今年はどうだろう?
期待したり・・・ しなかったり・・・。
ギャラリー正面の外棚に 山モミジとミソハギの根洗いの盆栽を飾る。
ミソハギのことを 祖母は盆花といって お盆のお供えと一緒に
飾っていた。
心得たように 毎年 お盆が近づく頃から咲きはじめる。
大木のユズリハや西洋カシワの下で 百日紅が元気に咲いている。
そのうす暗さが 花のピンクをいっそう冴えてみせる。
生前 父が言っていた。
「百日紅はねェ 暑いほどよく咲いてくれるんだョ」と・・・。
確かに 猛暑など なんのそのと言わんばかりの勢いだ。
それにしても こんなに暑いと思った夏は はじめてだ。
熱中症になりかけたり 体中汗まみれになって 
1日に 2度も3度も衣類をとりかえたり・・・洗濯も忙しい。
晴れとくもりが交互に入れ変わり さわやかな風も吹く 夏と秋の
気配とが隣り合わせでいそうな朝の仕事場で ドライオブジェを
作っていたら 16才の夏休み最後の日のことが思い出される。
今朝のような天気模様の 台風の去った日のこと。
文学少女の Yちゃんと 大宮駅近くの喫茶店で待ち合わせて
本や音楽や 映画のはなしをたくさんした。
サリンジャーの「ライ麦畑でつかまえて」がおもしろいと
教えてもらった。
その頃から サリンジャーやアップダイクやブラッドヴェリとか・・・
アメリカの作家を読むようになった。
理由はなく それ以来 Yちゃんと逢うことはなかった。
ミシマサイコやコマツナギが風に揺れながら咲いている。
ユウスゲもあと少し・・・。

2023年8月9日 記す 加藤 文子

  



玄関のひかり Ⅱ

 

 



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