盆栽屋の子供は 水やりがあるので 家族旅行のチャンスに
なかなかめぐまれない。
夏休みが明けて 登校すると クラスでは 旅行のことが話題になる。
私はといえば 東京の親戚の家で数日過ごすことが 何よりうれしい
ことなのだった。
訪ね先の 葛飾の父の妹夫婦宅には 少し年上の正子ちゃんと
信ちゃんがいる。2人して 私のめんどうをみてくれた。
裕福ではなかったが 思いやりのある 温かい家庭だった。
いつも 泊まりに行くのを 楽しみにしていた。
叔母は ライター磨きの内職をしながら 食事やおやつを用意してくれた。
みんなで洗面器を抱えて おしゃべりしながら おフロ屋さんに行くのも
楽しかった。
子供たちだけで行く時は 途中の公園でブランコに乗ったり
よその家の塀越しで 大きな声で 当時の流行歌を唄ってしかられたり
何だかわからない思いつきをしながら はしゃいでいた。
思いっきり笑い ふざけて じゃれあって 一緒にいた。
時間という意識から 解放されていた時代。
そんな日々も 遠く 遠くになった。
信ちゃんの訃報が届いた今 思い出が あふれてくるのだった。
なかなか会うことが適わなかったけれど・・・幸せだったんだヨネ。
キンモクセイの香りと そぼ降る秋の雨の中で 見送った。
ちゃんづけで呼んでくれる人も 少なくなった。

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あうりんこギャラリー・シーンⅡ |
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