カツラ 最終の色









 

 

  アシスタントが綴る 11月  

 

9月の長雨が落ちつき、ようやく気持ちのよい秋空になったとたん、冷え込みが本格的になりました。温室への取り込みも始まり、中庭やデッキの棚には植物がなくなり 少し淋しい景色になりました。
それぞれの秋の姿をゆっくり楽しみたいところですが、那須の冷たい風は あっという間に冬の空気を運んできてしまいます。温室に取り込むため、葉を落としはじめた木は 手を入れて落葉を促し、草は刈り込んで古葉などを整理します。作業台へ持っていき 次々と葉を落としてゆくと、鮮やかな色が足下に広がります。カタチも色々。なにげないことにも 思っても見ない美しさがあります。

温室の中央に カツラの古い大きな根洗いがあります。歳月を重ね 細やかに伸びる枝先で、光に透けるハート形の葉が 桃色や黄色に色づきはじめています。
そばを通ると 甘いカラメルの匂い。調べてみると 香のもとはマルトールという成分らしい。甘味を助ける働きがあり、食品にも使われるものでした。紅葉から落葉へと進む過程で 強く香るのだそうですが、見たところ 少し早すぎるような・・・?
犬のように鼻を近づけて しつこく嗅いでいたら、樹皮に擬態した多くのカイガラムシを発見。強い芳香は、樹液をチューチュー吸われたカツラが出した 救難信号だったのかもしれません。

それにしても このよい匂い、今回はじめて体験しました。
来年はどうでしょうか。


 2016年10月15日  山田 ナオコ


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