出窓のむこう


 

 

  アシスタントが綴る 3月  

 

I 君が、棚下や塀沿いに群生する 立ち枯れた茶色のカタヒバを、一掃してくれています。庭は 緑のコクリュウが主役になり、少し春に近づいた感じになりました。
葉に隠れてピカピカ光っていた青い実は、鳥に食べられたか ほとんどなくなってしまい
ました。陽射しが強くなり、窓越しの景色は少し色彩を取り戻している感じがしますが、外気はまだまだ冷たく、風はビュービューと吹きあれています。

冬の間に済ませておきたいパソコン作業や、展覧会に向けての色々の制作。
あれこれ試行錯誤しながらの机仕事は とても面白いけれど、この時期になってくると
少し焦ってきます。外仕事がだんだん気になりだすからです。
植物が動き始めると、やることが一気に押し寄せてきます。
慌てないように、できることは なるべく片付けておきたい。

加藤さんは 草ものにハサミを入れ、古葉を整理し始めています。
今日 久々に私も手入れをお手伝いしました。
ヤシャゼンマイの中に大輪トキソウとアジサイ、コタヌキラン、それに数年前飛び込んできた椿が集う、動かせないほど大きな根洗い。
その根元を覆うコタヌキランの古葉を除いていきます。
冬の間 根元を温めていた葉の下には、新芽が顔を出しています。傷つけぬよう まずは
大雑把に刈り込んでから、根元をみていきます。
数年前 同じ作業で、新芽を伸ばし始めたばかりの椿を、古葉と一緒に切ってしまった
ことがあります。切ることに夢中で、よく見ていなかったのだと思います。
地上部のほとんどを無くし、もうダメだと思っていたその椿は、なんと次の年 息を吹き返してくれました。今は だいぶ大きくなり、ツヤツヤした葉を陽に輝かせています。

もう あんなひどいことはしないように よく見ながら、古葉にハサミを入れます。
大輪トキソウが随分増えています。オォ、小さな小さなマンリョウも発見!
どうやって飛び込んできたのでしょう。
ゆっくりと、でも着実に成長し 変化してゆく植物たち。
今年も 共に春を迎えます。

 

2022年 2月24日 記す  山田ナオコ

 

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