思考する花


 

 

  アシスタントが綴る 5月  

 

那須岳のふもとを、満開の桜が華やかに彩っています。まもなく山全体も色をとり戻していくでしょう。あうりんこ星の周囲の林も、細かい枝先を柔らかなみどりやオレンジ色に染めて、春風にゆられています。しきりにさえずり合う鳥たちにつられて、早朝から庭をうろうろしています。
1日で驚くほど葉を広げたクラブアップル、シダの根茎から吹き出す 新芽の粒々、小さな葉の間にしまわれたつぼみも、みるみるふくらんでいきます。

新芽をねらう虫も 出てきました。シャクトリ虫にほとんどの芽を食べられた鉢もあり、慌ててパトロールを開始。西洋カマツカにひそむ虫は、とても小さく 丈も5mmほど。
葉に似せた色をしたりしていて、よく見ないと気付けません。葉の間に残る細かな
フンや、不自然にかたまっている芽などが怪しいサイン。
やわらかい葉を傷つけないよう 観察します。ピンセットをそっと花芽に挿し入れ、目をこらしますが、肝心なところがぼやけて よく見えません。2月から使い始めた 初めての遠近両用メガネのピントが合わないのです。仕方なく、翌日から 新旧メガネの二刀流で仕事をしています。
植物の休眠期に着けはじめ、日常生活での支障があまりなかったので、周囲の方々が
遠近はなかなか馴染まないと言っているのを聞き流していましたが、なるほどこれは
時間がかかりそうだと思うようになりました。

ギャラリーが始まり、外棚に並ぶ植物も増えてきました。庭もあちこち花ざかり。
今期展示の中尾さんの絵は、シンプルに見える構成のひとつひとつが 濃密で美しく、
植物を見ている時と とても近いものがあるなぁと思っています。

今しか感じられない空気を 楽しんでいただけたら幸いです。

 

2024年4月20日 記す   山田 ナオコ

 

 

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