ギャラリーは4月から


 

 

  アシスタントが綴る 2月  

 

いるとは聞いていましたが、あうりんこ星で はじめてリスを見ました。
降りしきる雪の中、くるみの木に積もる雪を豪快に落としながら、大きな尾を振り
走り回っています。動きまわるリスの姿は、かわいいというより たくましい感じ。
同じ木に ヒヨドリらしき鳥が数羽、寒さに体をまん丸にして、いつものことかと
いうように、身じろぎもせず 止まっています。

2月も半ばを過ぎ、少しずつ暖かい日が出てきました。
庭整理を本格的に始めました。必要のないところの落葉を除き、立ち枯れた草にハサミ
を入れていくと、休んでいた庭の輪郭がはっきりしだして、こちらも春に向けての
スイッチが入ります。立ち上がって庭を見回していると、デレク・ジャーマンの
プロスペクト・コテージを思い出しました。

映像作家の彼が、イギリス・ダンジェネスに 病と共にあった晩年に築いたのは、流木や
鉄の廃材などが美しく散りばめられた 唯一無二の庭。“可能性”や“展望” “見通し”などと
訳される「プロスペクト」という名が 冠されています。
加藤さんに見せて頂いた本「デレク・ジャーマンズガーデン」。
海辺の原子力発電所を背景に、小石だらけの地面にひざまづき、植物の手入れをする
彼の写真にくぎ付けになり、すぐに購入しました。木々が育たない荒涼とした地で、
どれほど丹精を込めたらこんな庭ができるのか、植物との生活が長くなるにつれ より
興味深く 本を眺めるようになりました。
彼が亡くなり、パートナーによって維持されているという庭は どうなっているのか
探してみたことがあります。動画では、潮風にポピーやアイリスが揺れ、バラが大きな
株になり、流木や小石のオブジェを覆うように 植物が育っていました。浜に向かって
点在する白い花の群れが 古いボートの合間を縫い、どこまでも続いていくような景色。
本から受けた印象があまり変わらないのは、パートナーのキース・コリンズが、この
場所を大切にしてる証のように見えました。

現在ではコリンズ氏も亡くなり、コテージを守ろうという団体に 維持管理が託されて
いるようです。
「この世のパラダイスは、庭となってあらわれる」
そう言った デレク・ジャーマンが、体現して見せてくれた 美しい景色。
どんな成長を遂げてゆくでしょう。

2023年 2月24日 記す  山田ナオコ

 

 

 

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